2020年7月7日火曜日

ホンモノとニセモノ

世界を俯瞰で見るとおかしな状況に気付く
ニセモノが売れている

車や時計やバッグ
いわゆるブランドは本物を求めるのに
その一方で
物体ではないもの
セミナーとか写真とか
実体のないものはニセモノが好まれている

何故だろう?
ちょっと考えてみた

それはつまりこう言う事なんだと思う

時計や服はホンモノとニセモノの差が明確だ
何処かの誰かが「これはホンモノです」「これはニセモノです」とはっきり教えてくれている
ニセモノを買うメリットは値段が安いと言うくらいのものだ
そして、本物を持っている方がステータスが上な気がする

だが、写真やセミナーと言った目に見えない物は誰もホンモノとニセモノの違いを教えてくれない
自分で選ばなくてはならない
そもそもニセモノがあることさえ知らないかも知れない

こんな例がある
10年ほど昔、某有名結婚情報誌で【結婚式スナップ¥39,800】の広告をよく見かけた。
結婚式スナップ写真の難しさを知っていた僕は疑問に思ったものだ。
どうやったらこんな安い金額で結婚式のスナップ写真を受けられるんだろう?
答えはとても意外なものだった。
要は詐欺なのだ。
まずスカウトマンが公園に行く。
理由は、【一眼レフカメラで自分の子供の写真を撮っているお母さんを見つけに行く為だ】
見つけたらそのお母さんに声をかける。
「可愛いお子さんですね、写真見せてもらってもいいですか?」みたいな感じだ。
そしてひたすら褒める「すごい上手ですね!何処かでプロとして撮っている方ですか?」
お母さんはもう有頂天だ。

ここで考えてみよう
スカウトマンが狙うターゲット【公園で自分の子供を一眼レフカメラで撮るお母さん】
まず第一に、このお母さんは間違いなく写真を撮ることが好きだ。
でなければ、わざわざ一眼レフカメラでは撮らない。
第二に、このお母さんはそこそこ時間の余裕がある。
でなければ、公園に来て写真は撮らない。
第三に、このお母さんはそこそこお金に余裕がある。
でなければ一眼レフカメラを趣味では買わない。
そして第四に、(ここが最も重要)このお母さんは写真を誰かに見て欲しいと思っている。(そして褒めて欲しい)
でなければ、写真は撮らない。

褒められて有頂天になっているお母さんにスカウトマンは畳み掛ける。
「実はカメラマンを探していまして、あ、私こう言うものです」
スカウトマンは名刺を出す。
『ナンチャラPHOTO ウェディングデザイナー山田太郎』
「たまたま通りかかったら可愛いお子さんがいて、お母さんが立派なカメラで撮影しているものだから、つい声をかけてしまいました。いや~僕はラッキーです。こんなに写真が上手い方に出会えるなんて!すごい上手いです。どこで習われたんですか?」
「いえいえ、ただの趣味なんですよ」
「ええ~!!自己流でこんなに上手いんですか!?長年この業界にいますがちょっと見ないレベルなんで、本当に驚きです!!ぜひうちで働いて欲しいくらいですよ!あー、でもお子さんのお世話大変ですよね?」
ちょっと間を置き
「土日のどちらかだけでもお願いできませんか?」
「そんな私なんて
「無理強いはできませんが、この腕を埋もれさせておくには勿体なさすぎて
スカウトマンは少し考え込むふりをする。
「こんなのはどうでしょう?週一回3時間だけ結婚式のスナップ写真を撮ってみませんか?」
「そんないきなりは怖いです」
「そこはご安心ください。最初の数回は練習という形でプロカメラマンに同行して現場の空気感や流れをしっかりみていただき、ご自分で納得して『よし!』と思ったらプロカメラマンデビューしていただこうと思っています。ご自分が納得するまで何度でも練習してください。・・・これはあくまでデザイナーとしての僕の経験でお話ししますが、あなたなら一回の練習ですぐにトップカメラマンになると思います。あ、今のは先輩カメラマンには内緒でお願いします。笑」
みたいなやり取りがあり、もうお母さんはやる気満々だ。
「ここから先は契約の話になります。練習期間はギャラは発生しません。デビューした後は一回の撮影で基本2万円、指名が付くようになるとプラス指名料という形になります。あと、皆さんには登録料として3万円いただいています。3時間の撮影を月に5回して10万円。あなたならすぐ指名がつくので月15万円はすぐですね。」
そして結婚式撮影当日、髪を後ろでまとめ黒いスーツにEOS kissを携えたお母さんが緊張しながら式場に到着する。
ドキドキしながら先輩カメラマンを待つ。
が、いくら待っても現れない。
「え、もうすぐ始まっちゃうよ、大丈夫なの?」と焦っているところへケータイが鳴る。
ナンチャラPHOTO 山田太郎の文字。
ホッとするお母さん。
しかし、地獄に落とすような内容が告げられる。
「すみません!!!!トラブルで今日行くはずだったカメラマンが行けなくなりました!一人で何とかしてください。お願いします。大丈夫!あなたの腕なら全然大丈夫です!!僕からのアドバイスは、プロとして振舞ってください!新郎新婦を不安がらせないようお願いします。本当すみません!ですが、正直言ってこのトラブルがあなたの時でよかったです。」
などと勝手なことを言って電話は切れる。

可哀想なことに、
練習だと思って気楽に結婚式を楽しもうと思っていたお母さんは本番写真を撮ることになる。
そして、訳も分からず結婚式の写真を素人のお母さんに撮られるカップルがこうやって生まれる。

ナンチャラPHOTOはカップルから¥39,800、お母さんから¥30,000、合計¥69,800ゲットしたことになる。

全てがそうでは無いと思う。
が、これが格安写真のカラクリだ。


話を元に戻そう
今回このカップルがニセモノの写真を選んでしまった理由は何だろうか?
それは、ズバリ価格だ
知らない人も多いと思うが、結婚式のスナップが¥39,800と言うのはかなり破格だ(ホンモノの相場は平均¥100,000といったところだろうか)
問題は適正価格を知らなかった事と、それを調べることを怠った
この二点だと思う

例えば定価が二百万円の新車を¥796,000で売ってたらほとんどの人が怪しむだろう
それは、何となく車の価格を知っているからだと思う
そして、知っているから騙されたく無いと強く思うだろう

しかし、人は知らないことに関しては思考を放棄する癖がある
根拠もなく大丈夫だろうと決めつける節がある
車の運転を見ていると気付く
一時停止で止まらない車の何と多いことか!
あれで事故が起きないのはただの結果に過ぎないと思う
「何が起こるか分からない、だから一旦停止しましょう」と言うのが一時停止の意味だ
それがいつの間にか「どうせ何も起こらないだろうからそのまま行っちゃえ」に変わっている
思考の放棄だ

スマホで世界と繋がる時代だ
調べようと思えばいくらでも調べられる
問われているのは調べる力、調べようとする熱意なのだ

とは言え、ホンモノだろうとニセモノだろうと選ぶのは自分だし、自分で稼いだお金だ
それは、ドブに捨てようと有意義に使おうと本人の自由だ

ただ、勿体ないとは思う
お金ではなく
時間がだ
巻き戻せない時間はそれこそお金では買えない


人生は短い
本来ならニセモノに費やす時間など無いはずなのだ

後悔しない人生を送ろうじゃないか



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